3人が本棚に入れています
本棚に追加
ナタリアの調べものが終わったのは、陽が大分傾いた頃だった。本の場所が分からなかったので、一先ず席に置いたままにして出た事をローザに謝ると、後で人を遣って片付けておきますと請け負ってくれた。侍女たちはあの蔵書の場所をある程度把握しているらしい。
「感心するわ」
「いえ、皆が皆知っているわけでは無いんです。私は司書部に恋人がおりますので……」
「あぁ、だから詳しいのね? それでも不勉強よりも余程素敵よ。今度色々な事を教えてくださいませ」
あれだけの蔵書だ。自分の知らない知識がまだあれだけあるという事が、ナタリアに素直に喜ばしい。
「は、はい。私でよろしければ……、王妃様も本がお好きなのですか?」
「そうね、よく読んだわ」
地理の本から紀行、毒物や薬草の類の見分け方や使い方。武器の扱いや兵法、経済、交易。あらゆる知識を伯爵邸で詰め込まれたと言ってもいい。しかし、本が嫌いなわけでは無い。社交の場に出るよりずっと安心して居られる。
「でしたら、また何か必要でしたら寝室にお持ちいたしますわ。とは言え、持ち出しできる範囲でですが……」
「えぇ、今度お願いしようかしら。さぁ晩餐に向かいましょう?」
王妃に促されるまま晩餐へ向かう道すがら、ナタリアはローザの恋人についてよく尋ね、楽しい時間を過ごした。
ナタリアは、ある計画を企てていた。それに都合よくローザがいた。彼女が必要なのだから、懐柔しておくべきだろう。
最初のコメントを投稿しよう!