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一章 七幕 司書が来りて何か言う
「こっ、国王陛下! お耳に入れたい情報がございます!」
それは、シャイアとナタリアの物騒な晩餐から五日程経った日に起こった。
朝議の場に司書が飛び込んで来たのだ。
「なんだ貴様は! ……その服は、司書ではないか」
「場を弁えよ。ここは貴様の来る所では無い」
「司書が朝議に飛び込む等、これはまた戦の先触れかもしれませんなぁ」
先代の王の時代から仕えている将軍、騎士団長、名だたる侯爵等十数名が顔をそろえていたが、一部からは笑い声まで上がった。
シャリアは笑顔の下で、ロダスは隠す事も無く嫌悪の眼差しを向けていた。戦の前触れ等と笑えない。今は、どうやって賊を仕留めるかを討議する時間だというのに、民草や対応に当たる兵士の命をなんだと思っているのだろうか。軍議の場でも数名、シャイアが即位してから召し上げた者はシャイアたちと同じような表情をしていた。
司書が息せき切って駆け込んできたので、侍女が水を与えるところまで待って、シャイアが口を開く。
「よい、申せ」
笑顔のまま、底冷えのするような声で告げられた一言に、嘲笑していた者たちもピタリと黙る。
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