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「恐れながら……、来度の山賊への対応、私が一策を計ずる事が出来るかもしれません」
「よろしい。――この者に椅子を」
何なら先の笑えない冗談を言った将軍の一人を外してそこに座らせてもいい。
自分より幾らも身分が上の者たちに笑われたとしても、心挫けずに言葉を発する者というのは貴重だ。
入口で膝を折り、最敬礼の姿ではあったが、些かの動揺も無いとシャイアは見て取った。
シャイアの内心でかなり高く点を付けられた司書は、末席に椅子が運ばれると、その椅子の前に立って王をまっすぐと見詰めて礼をした。右の拳を左の掌に当てる、上の者に対する略式の礼の姿だ。
「ぼ……私は、当王宮内司書部に所属致します、リァンと申します」
「リァン。よく来てくれた、まずは礼を言う。しかし、時は一刻を争う。早速で悪いが策とやらを聞かせてもらえるか」
「はっ!」
シャイアは、こういった場ではこういった場にそぐう王の言動が出来る。今はもう、誰もがリァンに注目している。王が目を向け、耳を傾けているのに、自分だけが目をそらし笑う事など許されないと、良くも悪くも『老人』達には染み付いている。
注目の的となってもリァンの姿には一糸の乱れも無い。
状況を打開できるかもしれないという希望に満ちた瞳で、リァンは王に策を語り始めた。
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