一章 二幕 戦の理由

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 しかし、いつしか犯罪者や、そうでなくとも地元に居られなくなった者がウルド山脈に逃げ込むようになり、やがて山賊行為が蔓延った。どちらの国の領域でもないのだから、これを取り締まる法が無いのだ。  そのせいで、両国ともに国を挙げて交易を推奨するものの、物騒さからやがてそれも途絶えていった。  今では国が軍を出し、国と国との交易として、ヴァベラニア王国からは食糧を、ソロニア帝国からは外の情報や技術を、少しずつやり取りするに留まっている。また、両国の間での移民もできなくなった。山賊が紛れ込み、国境付近の村や町を襲う騒ぎが幾度も起こったためだ。  商人や農民が其々自由に出入りできないというのであれば、ヴァベラニア王国にとっては文明の遅れの致命傷となり、ソロニア帝国にとっては人口の捌け口と食糧の致命傷となった。  よもや、ソロニア帝国の在所では、賄いきれない食糧事情に餓死者が出るまでとなった。  そして挙兵へと至ったのである。  ソロニア帝国の兵は強かった。自分の母を、父を、妻を、子を、飢えさせまいとする兵二万、さらには海洋諸国からの応援もあり、ウルド山脈の関所を破ってヴァベラニア王国のシサリス平原で相対することとなった。  対して、それまで自分たちの国を脅かすものはすべて自然に守られてきたヴァベラニア王国の兵は、弱い。     
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