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一章 三幕 歓談
「さて……」
結婚式から一週間。連日開かれる宴の類も落ち着き、初めてシャイアはナタリアと二人で晩餐となった。
一週間、隣で言葉と踊りだけは立派に社交を務めてくれたが、ナタリアの無表情は解れる事が無かった。
そんな自分のお嫁さんに対し、シャイアはデザートの頃に、ようやく声を掛けた。
「改めて、初めまして。私はシャイア。ナタリア、どうぞよろしく」
笑顔で話しかけたものの、ナタリアは椅子から立ち上がる事はしなかったが、深く頭を垂れて応えた。
「私のような者にお声がけくださり、ありがとうございます。国王陛下」
シャイアは慌てて頭を上げさせると、困ったように笑って首を傾げた。まだ十七歳の王は、威厳は無いが愛嬌だけは人の倍備えていた。同い年であるナタリアはその様子にも眉一つ動かさず、姿勢よく座ったままシャイアの顔を見詰めている。
「シャイアと呼んでくれないかな。君の礼儀は確りしすぎている程素晴らしいけれど、これからここは私の家であると同時に君の家なんだ」
「……家、とはいえ、父の事もオペラ伯爵と呼んでおりましたので」
ナタリアが暫く逡巡して答えると、シャイアの顔はぱぁと明るくなった。
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