変わらない現状

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変わらない現状

数十分後。 その部屋――多分クロさんのプライベートルームだと思う――にお弁当を届けてくれたのは、以前厨房で会った事のある彼だった。 その彼には「あの時はメシ作ってくれてありがとう」って言われたし、あの日のように「ヌレガラスちゃん」とも呼ばれた。 「今日も髪綺麗だなぁ」とも言われたし「またメシ作ってくれたら嬉しいなー」とも言われた。 「お前も一緒に食えば?」 クロさんにそう言われた厨房の彼は「んじゃそうしようかな」なんて言いながら何故かソファーの背凭れを跨ぎ、あたしとクロさんの間に割り込んで来た。 彼曰く「クロの隣にいると妊娠するぞ?」らしい。 さすがにその言葉を鵜呑みにして驚いたりはしなかったけど、厨房の彼までもがあっさり“クロ”って呼んだもんだから、ホントにクロさんの名前は“クロ”なんじゃないかと、そっちには衝撃を受けた。
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