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その中で。
一つだけ途轍もなく地味なジョブがあった。
マントを羽織って、鉄扇を装備したキャラクターが孔明の前に表示される。
「これは?」
「ああ、それ? それはストラジェスト。軍師っていう特殊職のジョブだよ」
「特殊職?」
「前衛と後衛に回復職。その三つとは役割のまったく違う職のことだよ。特殊職は性能がピーキーだから上級者向けのジョブばっかりだな。その中でもストラジェストは別格。絶対にやらない方が良い」
玄徳の強い口調に孔明は疑問をおぼえた。
「どうして?」
「そりゃあ、マッピングしたり通信したりステータスを分析したり全体に指示を出したり。ともかくやることが多すぎるジョブなんだよ。仲間の指示出しとか超責任重大だし、情報処理量も他のジョブの数倍十数倍はある」
「へぇ」
孔明はストラジェストの詳細を閲覧しながら、玄徳の話を聞き流した。
「楽しくないんだよ、ストラジェストって。プレイヤー全員が軍師の指示を聞いてくれる訳じゃないし、負けたら負けたで責任押し付けられて文句言われるし、傍から見ててもしんどそうなジョブだぜ」
「軍師ってそういうもんだからね」
「ゲームを楽しむ隙間なんてなくてさ。ひたらす戦力を練って、指示を出して、情報を処理するジョブなんて、全然面白そうじゃないだろ?」
「どうかな?」
孔明は今記憶したストラジェストの性能を頭の中で分析していた。
玄徳に質問する。
「でも、このストラジェストってこのゲームには必須でしょ」
「まぁな。人気はないけど、多人数戦略ゲームであるスリキンでは、ストラジェストがいるチームの方が断然有利だな。特に世界大会に参加するようなチームには絶対に一人はストラジェストがいるって感じ」
「だろうね」
「でも、戦闘能力はほぼないし、闘技場(アリーナ)でのイベントバトルとかも参加できないし、デメリットばっかりだぜ?」
「その分メリットもたくさんあるさ」
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