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ともかく様々なプレイヤーがいる上に、そのプレイヤーたちの人数があまりにも多すぎて孔明たちの歩いている道はごった返していた。
「す、すごいね」
「この辺はメインストリートだし休日だからな。一応日本サーバーだけど海外からアクセスしている人も多いんだぜ」
「へぇ」
「あっちの方に移動するか」
玄徳は人混みを避けて、野外スペースのあるようなカフェへと立ち寄った。
「中世なのにカフェ?」
「まあ、ゲームだからな」
玄徳が肩を揺らして笑い、注文をいくつか頼んだ。孔明はゲーム内で頼まれた食事とはどういうものだろうと興味津々な様子で待っている。
「さて、孔明」
玄徳が席から立ち上がった。
「俺は少し寄る所があるからここで待っててくれよ」
「ん、どこに行くの?」
「お前がログインしたからな。多分フレンドキャンペーンの特典が俺のバンクに……」
と、そこまで話した所で玄徳は慌てて自分の口元を手でおおう。
孔明は机に頬杖をついた。
「なるほどね。君が熱心に誘ってきた理由が分かったよ」
「あ、あははっ! い、今キャンペ中の特典がすげぇ俺好みのスキンでさ……お、怒ってる?」
「逆に納得したよ。玄徳らしいね」
「わ、悪いな、孔明! すぐ戻るからちょっと待っててくれ!」
玄徳は謝りながらも顔は笑顔のまま、その場をそそくさと去っていった。
孔明はゲーム内でも相変わらずすぎる幼馴染の様子に呆れつつも、何となく安心した。
ゲームといってもここにいるのはみんな【人間】なんだ。
街中を歩く人々も、自分と同じようにカフェで休憩してお喋りしている人も。みんな自分と同じで、どこかからこのゲームへと接続をしている現実世界の誰かであるのだ。
そう思うと孔明は何だか不思議な感じがした。
そして、そんな風に孔明が街行く人々を観察していれば。
「おい、いたぞ! あっちだ!」
穏やかではない怒鳴り声が、カフェで休む孔明の耳にまで届いてきたのであった。
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