1人が本棚に入れています
本棚に追加
エルフや妖精など、様々なキャラクターが行き交う街中でも特に目を引く少女が。
孔明の前を颯爽と通り過ぎた。
巨大なキノコだ。
いや、違った。巨大なキノコのかさに見えたそれは大きな帽子だった。
「どうしよう、どうしよう~!」
独り言にしては大きすぎる悲鳴を上げながら、巨大帽子を被った少女が過ぎ去っていく。声から察して彼女が困っているということは何となく分かった。
「あっちだ! 追え、逃がすなよ!」
続けて甲冑を着込んだ騎士の一団が、巨大帽子もといキノコの少女を追いかけて、孔明の前を通り過ぎる。
孔明はキノコの少女と騎士の一団を目で追った。
「……何かのイベントかな」
孔明は机に頬杖をついたまま、頭の中で考えた。
こんな街中で甲冑を着込んだ厳めしい騎士団に、目を引くキノコ帽子の少女。ゲーム内のイベントなら面白そうだし、人間同士の揉め事なら多勢に無勢って感じかな。
どっちにせよ、少し面白そうだ。
どうせ玄徳が戻って来るまで時間も持て余している。
ちょっと遊んでみるか。
そんな風に考えていた。
ここで誤解がないように言わせてもらえれば、孔明とはこういう少年だった。
面白そうだと感じたことは、面倒事でも自分から引き受ける。首を突っ込んでしまうのだ。そういう難儀な性格の少年だったからこそ、ストラジェストなどというスリーキングダムで一番ピーキーな性能のジョブを選んだというもので。その性格が災いしてリアル生活でも学校の教師や生徒から距離を取られてしまうのであった。
孔明は席を立ちあがり、カフェから出た。
マーリンは『アヴァロン』内を逃げ回っていたが、ついには追い詰められてしまった。
「わ、わわっ、行き止まり!?」
このスリーキングダムを二年以上プレイしているくせに本拠地内のマップを読み間違えるという致命的なミスを犯したマーリンは、目の前に立ちはだかる壁を見上げて立ちすくむ。
「ようやく追いついたぞ」
彼女の後ろから、野太い男の声が聞こえた。
「こんな路地裏にまで逃げるとは……覚悟は出来ているだろうな?」
金髪碧眼で、あごに髭を生やした大男であった。厳めしい甲冑に身を包み、後ろに同じような甲冑を着込んだ騎士たちを引き連れている。見るからに武骨そうな集団だった。
最初のコメントを投稿しよう!