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そして金髪碧眼の大男の鎧には、青地に三つの王冠が載せられた紋章が施されている。
「アーサー……」
キノコ帽子を被った少女マーリンが男の名を呼んだ。
アーサーと呼ばれた大男は、マーリンを見下ろす。
「よくもやってくれたな。俺たち【円卓の騎士団】に喧嘩を売ってただで済むと思うなよ」
「け、喧嘩って、最初はそっちから挑発してきたのに!」
マーリンは声を荒げて反論した。
「私のレギオンがいくら弱いからって、あんな風にポイント稼ぎに使われたら誰だって普通怒るじゃない!」
「俺たちはこのゲームのルールに則っただけだ。文句があるなら運営に言え」
アーサーはバッサリと切り捨てて、マーリンへと近付いた。
「所属国が同じ者同士でのPKは禁止されている。だから俺たちはお前に手を出すことはできない。だが、GMに通報してお前のアカウントを封印することはできるんだぞ?」
「う、ううっ……」
「どうする? お前のレギオンなんて、お前がいなくなったらあっという間に消えてしまうぞ。それが嫌だったら……」
と、アーサーが怯えるマーリンに強く迫った所で、路地裏の外から誰かの声が聞こえてきた。
孔明の声だ。
「こんにちは」
間の抜けたセリフだった。空気の張り詰めていたその場で突然現れた孔明の挨拶は、騎士たちの怒りや緊張感を妙に削いだ。
「みなさん、ここで何をやっているんですか?」
続けて孔明が話しかける。
騎士たちが、先頭にいるアーサーを仰ぎ見た。
「お前には関係ない。どこかへ行っていろ」
アーサーは孔明に向かって脅しかけるような強い口調で言い放った。
孔明はそよ風を楽しむように笑顔だった。
「もちろん僕は無関係なんだけど、可愛い女の子をおじさんたちが囲んでいる絵ってあんまり見ていて気持ちの良いものじゃないと思いません?」
「なにを言っている、こいつは……」
アーサーが何か弁解をしようとした所で、マーリンがアーサーの脇をすり抜けて孔明の方へと駆け寄った。
「た、助けてください!」
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