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「そのスリー何とかがどうしたの?」
「スリーキングダム! 三つの国に分かれてプレイヤーたちが争うゲームで、これがまた面白いんだよ、孔明!」
「それは分かったけど。ゲームなんて持って来られても、僕の家にはフルダイブ用のゲームデバイスなんてないよ?」
「大丈夫! お前がそう言うと思って俺のお古のヘッドデバイスとか持ってきたから! 今すぐにでも一緒にフルダイブできるぜ!」
玄徳が鞄からピカピカの最新ヘッドデバイス「BK201」というあまりにも早いレスポンス性能と業界最軽量を謳い、まるで黒い死神と契約したような快適さという妙な売り文句で販売されているゲーム用デバイスを取り出した。
玄徳は最新鋭のデバイスを右手に持ち、左手には見るからに使い古された旧式のヘッドデバイスを持っていた。
「ちょっと待って……一緒に?」
孔明は玄徳の誘い文句を聞き逃さなかった。
デバイスを二個掲げた玄徳が清々しいまでの笑みを浮かべる。
「そう、俺と一緒にゲームやろうぜ、孔明」
孔明は玄徳のお願いを断った。
「僕はやめておく」
「なんだよ、じゃあ、俺一人で勝手にやるけどそれでもいいのか?」
「僕の家で、一人でゲームやるの?」
それなら自分の家でやりなよと、孔明は言おうとしたが一度誘いを断っている手前、どうにも文句を言いづらい雰囲気であった。
玄徳はヘッドデバイスの脳波同調率や色彩などを自分好みに調整してから、頭に装着させる。
「さすが最新型。軽いし締め付け感も全然ないな」
「まあ、見た目は結構SFしていてかっこいいね」
「だろ?」
ヘッドデバイスを装着した状態で玄徳が笑った。
そのまま部屋の中をてくてくと歩き、孔明のベッドへと寝転がった。
「玄徳」
「それじゃあ俺、スリキンやってるから寂しくなったら声かけてな!」
デバイスのフレームが青白い光を帯びる。起動したデバイスに内蔵されたマインドシンクロ『5』ウェーブシステムが玄徳の脳から発せられる5つの脳波を解読し、玄徳に最も適したデータ世界を彼の脳へと提供していく。
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