カミカクシ。

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 と、話は逸れたが。  俺はなんも悪いことしてねー、普通の生活しかしてねー黒猫だがな。黒猫だからなのか、俺自身も普通なのかと言われるとちょっと違うんだよなあ。  なにが違うのかって?まあ早い話な。…見えるんだよなぁ。  おいおいおいおい、なんだよちょっと声潜めてやっただけでびびってんじゃねーよ!知らなかったのか?人間より、猫の方が“視える”奴ってのは少なくないんだぜ?  “気づく”って言い換えた方がいいかもな。…大抵、ああいうモンは足下から這い上がってくるもんだ。俺らは人間より地面が近いからなあ。その分、下の方に溜まってるもんってのはよーく見えるんだ。  あいつらは、くらーい影が好きだ。たまに明るい場所を堂々と歩いてて、堂々としすぎてて気づかれにくいのもいるけどな。  そいつらは、本当はいつでも俺らのすぐ側にいるんだ。すぐ側で、俺らがすることをじーっと、ただひたすらじーっと見てるんだ。  敵意?害意?もちろんあるだろうけどな。そういうのとは、ちっとは違うな。大半の奴は、それ、が悪いことだなんて思ってない。息をするのと同じさ、ただ本能で動いてるだけだ。本能に、それそのものに善も悪もないだろう?  ただいかんせん人間ってのは脆いもんだからね。そういうもんが運悪く見えたり、運悪く触っちまったりしただけでアタマがおかしくなるのも少なくないんだ。おかしくなったまま消えちまう奴とか、死ぬ奴とか、運が良くても病院送りになる奴は多いだろうなぁ。だって、お前ら脆いし、頭も固いから受け入れる器がないし。…でも、それ、“あいつら”が悪いかっていうとちょっと違うと思わね?  だって、あいつらはただそこにいて、這ってるだけなんだしよ。  ただなんとなく縄張りを持ってて、なんとなく底にいて、なんとなく人間に触ってみたりしてるだけだ。それで勝手に人間が発狂して壊れるだけなんだ、悪いのってどっちかというと人間の方だと思うんだよなあ。
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