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「よお、今晩は。お前さん見かけない顔だな。どちらさんだい?」
俺が問いかけると、そいつは目玉をまんまーるにして、言ったんだ。口は無いけど喋れるんだなぁ。多分影の中に見えない口があったんだな、きっと。
「おお、面白いお客さんだね。ワタシを見ても驚かないのだね」
「何で驚くんだ?お前らは、いつも普通にそのへんに溢れてて歩いてる、そういう“モノ”だろう?」
「ああ、そうだね。その通りだね。しかし驚いた驚いた。まさか久しぶりの話し相手が黒猫とは思わなかったものだから。最近の人間と来たらいけないよ。みんなワタシ達の存在なんていないものだとばかり思い込むから、みんな見えなくなってしまっていけない。元はといえば、ワタシのことも誰かのことも、みんな人間が作った逸話だというのにねえ…」
「まあ、そうだな。今の人間の大半は、知らねー奴か、知ってるフリしてる奴だもんな」
「おやおや、辛辣だ。まあ君の言う通りではあるのだがね」
随分芝居がかったしゃべり方をするなぁとは思ったよ。
でも、まあ俺も暇だったしな。面白そうだから、少しばかり会話に付き合うことにしたのさ。
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