カミカクシ。

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「実はだね。ワタシはカミカクシなのだよ」 「んん?かみかくし?かみかくしって、神隠しかい?それって起きる出来事の名前であって、誰かの名前じゃない気がするんだけどよ」 「その認識も間違いじゃぁないね。でも、ワタシはカミカクシなのさ。神でもなんでもない、棲みかはこんな狭い小さな影のいくつかでしかないのに、でも立派にワタシはカミカクシなのだよ」 「よくわかんね」 「だろうね。君は聡明なようだから少しばかり話をしようか」  目だけでニタニタと笑いながら、自称・カミカクシは言ったんだ。 「神隠しと呼ばれる出来事の大半が人間の仕業だってのは君も知ってるだろう?山に迷いこんでうっかり帰れなくなった奴。殺した人間を山に捨てて、山で消えたことにする奴。昔は山の神様に生け贄を捧げる、なんてこともしていたらしいが、あれも実際人間が思い込んで勝手にやってるだけさ。神様って奴は人間を欲しがって浚ったりするもんじゃないんだよ。だって、そんなもの貰ったって邪魔になるだけだろう?自分の領域を人間なんぞの肉で汚されたらたまったもんじゃない。人間が押し付けるから、しぶしぶ受けとることはあるかもしれんがね。…まあ神隠しと呼ばれる現象の正体なんてもんはそんな夢も希望もないもんなのさ」  そうだろうなぁ、と思ったよ。  だってこの世界で人間を殺す生き物つったら、人間と蚊で一二を争うっていうじゃねーか。  怪異は、ああいう奴等は人間を早々殺しはしないよ。お前らが勝手に触って勝手にトチ狂うだけだ。 ほんといい迷惑だよなぁ。
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