1

7/8
267人が本棚に入れています
本棚に追加
/267ページ
 しかし、モデルとミュージシャンでは中々スケジュールも噛み合わない。  そう互いに悶々としていたら、何とこの度、ナモ国で開催される事になった『MHJ』と『ナモ・コレ』のビックイベントが同時開催される事になったというではないか!  それが決まって直ぐに、電話で互いに喜びの報告をし合い、現地では、時間を取って必ず会おうと約束をした。  お忍びデートだ♪  零は浮かれて、事務所がトントン拍子に進める話にもノリノリで当日を迎えたのだが…………蓋を開けてみた所、零のスケジュールは殺人的にタイトなスケジュールで、全く持って自由になる時間は無かった。  そして、ユウの方にも、大いなる関門が待ち構えていた。  この度ユウが契約したメジャーレーベル(ジュピタープロ)の社長の名は、御堂(みどう)(ひじり)という。 ――――聖は、ユウの父親だった。  三十三になるユウの実父であり、歳もまだ若く、四十六だ。  彼が十三の時に生まれたのが、ユウなのである。  この聖という男。  ユウと並んでも、とても親子には見えず、兄弟にしか見えない程の若々しさだ。  こちら()も自身が大変に複雑な環境で育ち、極道にまで身を落とした事もあったが、現在は一人息子のユウこそ命と、極道からは足を洗ってカタギで頑張っている。  そう、とにかくこの父親、ユウをとことん溺愛しているのだ。  だから、いつ会っても零の事は、ハエやゴキブリを見るような眼で冷ややかに睨んでくる有様だ。  その聖の右腕が真壁了という男で、ユウのマネージャーに付いている。  つまり、何とかユウと連絡を取りたいと零が思っても、まずここで止められるのだ。  故に零は、ユウの方から連絡が来るのを待つのみの、忍耐の日々だ。 (――――ユウさんの搭乗した飛行機は、もう到着したかな……)  零は、撮影絡みでパリからの便だったので、日本からの便には搭乗出来なかった。
/267ページ

最初のコメントを投稿しよう!