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ハッキリ言わせてもらうと、とてもショックを受けた。
自分と違い、真剣に将来の進むべき道を模索している幸樹の考えに。
だから、こうして夏休みを利用して、一緒にここまで付いて来てやったのだが……。
「――――あのな、オレだって、叔父さんとは数える程しか会った事がないんだぞ。それを、お前がどうしてもって言うから、セッティングしたんだからな」
径の不機嫌な様子に、さすがの幸樹も言い過ぎたと思ったか、
「いや、ゴメンって! 」
と、頭を下げた。
「…………ただ、この写真のオッサンと、お前があんまりにも違うもんだから」
そう続ける幸樹に、径は首を傾げる。
「そんなに違うか? 」
「もちろん!お前って、背が低いし可愛い顔してるし頭は金色だし、ゴールデンハムスターみたいに小動物っぽいじゃん? でも、このオッサン髭面のオランウータンみたいで似ても似つかないし……えっと、径の母さんの弟なんだよな? なら、血の繋がりはあるんだろう? それにしてはさぁ……」
さり気なく『可愛い』と言われたことにポッと頬を染めたが、径は一つ咳払いをすると、フンっと横を向いた。
「バッカじゃないの! オランウータン何て言ったら、お前一発でクビだぞ」
「ああ、ま~な~……オレって、思った事が直ぐに口に出るからなぁ」
径の様子に気付かず、幸樹はフゥと嘆息する。
そして今度は、チラチラと前の席の方へと視線を送った。
何かと思ったら、
「……そう言えばよ……この飛行機に、なんだか有名人が乗ってるらしいぜ」
幸樹のその言葉に、径はピクリと反応する。
「有名人? 」
「そうそう、ほら、ナモ・コレの他に、MHJも開催されるじゃん? だから、それに出場するミュージシャンとか、アーティストが――――」
確かに、それはあり得る話だ。
日本からナモ公国への直通便は、週一回だけなのだし。
外国を経由しても、あまりナモ公国への便数は多い方ではない。
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