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 だから、多くの居住者たちはプライベート・ジェットを所有しているそうだ。  ジェット機で来て、カジノで遊んでバカンスを満喫して、帰る。  話を聞くと、本当に、世界各国のセレブが集う国だと思う。  物価だって、決して安くはない。  渡航費と滞在中の宿泊費は叔父が出してくれると太っ腹な事を言ってくれので、そこは助かったが、その他は実費だ。  今まで溜めた貯金がパーにならぬように、倹約したい所である。  なのに、そんな径の心中を知ってか知らずか、幸樹はミーハーな事を言い出した。 「有名人の生写真とか、レアだよな? 今の内に、誰でもいいから写真撮らね? 」 「…………あのなぁ……」  お前、もっと緊張感を持てよ!――と言い掛けた所で、ポーンっと機内音が鳴った。 [当機は間もなくナモ空港に到着いたします。今一度、お座席のシートベルトをご確認ください。本日は、AMA航空をご利用いただき、真にありがとうございました。また、皆様と機上でお会いできることを、心からお待ち申し上げます] 「――だってさ」 「はいはい」  さすがの幸樹も、大人しく席に着いた。  窓から覗く下界には、徐々に、ナモ公国が見えてくる。  ナモ公国は、大小30もの島から成り立つアジアの楽園だ。  総面積は四国の半分くらいと小さな国だが、観光業と金融業でとても潤っている――と、事前にそのくらいの知識は頭に入れてきた。 (ナモ公国か……オレ達高校生だしカジノなんて無理だけど、やっぱり華やかな国なんだろうな)  ここで開催される大規模ファッションイベント『ナモ・コレ』と、世界最大級の音楽イベント『MHJ in World』を、同時に体験できる滅多にない機会を得られたことに、高揚するのを止められない人間などいないだろう。  果たして、自分一人の行動力で、ここまで来ることが出来ただろうか?  いよいよ到着地が見えてきたことで、径はポツリと口を開いた。 「――――幸樹、サンキューな」 「え? なにが? 」
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