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 一年前までは、零はアイドルグループTriangleの三人のメンバーの一人として活動していた。  だが、他のメンバーである明と美央がそれぞれ別の道に進みたいと言い出し、零も二人の願いを優先する事を決意して、Triangleは人気の絶頂で解散を発表した。  リーダーの明はTriangleでアイドルを結成する以前は、劇団出身の子役だったので、もう一度役者の道を。  美央は、自分で作った話を脚本に起こしたいから、著名な脚本家に弟子入りする道を。  そして零は、元々芸能界に入った切っ掛けが子役モデルだったので、再びモデル業に舵を切ったワケだ。  Triangle解散から一年が経つが、今でも三人の関係は良好で、度々飲み会をしたりと楽しく親交を深めている。  当時、零は、ハーフならではの抜群の派手なルックスで、メンバー一注目を浴びていた。  その事に美央の方は強く反発していたようだが、こうしてそれぞれが違う道を歩み出したことで過去のわだかまりは消え、今は本当にいい友人関係が築けている。  明は最初から役者の方を希望していたので、アイドルを解散してホッとしているようだ。  今は事務所を移り、俳優業に強いジュピタープロダクションへ移籍して頑張っている。  いつかハリウッドにも進出してやると、目をキラキラさせて語る明は本当に輝いている。  そういうワケで、それぞれが新しい道を歩んで順調なワケだが……零は、今のところ三人の中では、一番のシンデレラ・ストーリーを驀進していると言えるだろう。  きっと外野はそう思い、羨むのだろう。  だが本人は、この状況を素直に喜んではいなかった。  四年前、零は年上のミュージシャン…………畠山ユウと想いを通じ合い、念願叶って恋人同士になった。  その恋人に至るまでに、様々な誤解やトラブルや危機があり、それを乗り越えてのゴールインだった。 ――――今でも、恋が実った瞬間の喜びは忘れていない。  しかし、そこから一気に進展するかと思った恋仲は、かなり停滞していた。  理由は、本当に複雑だが、ある意味単純でもある。
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