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「――――はい、そうです」
素直に頷くユウに、真壁は嘆息を返した。
「社長から、その方とは断じて会わせるなと言われています」
「えっ!? 」
「あなたは、日本のトップ・スターの一人として、フェスの舞台に立つんですよ? その前に、いらぬ恋愛沙汰でゴタゴタして、当日体調不良にでもなったらどうするんですか? 」
手厳しいマネの忠告に、ユウはむぅっと膨れた。
「……それって、社長の命令ですか? 」
すると、真壁マネは気鬱な表情になって首を振った。
「社長もそうですが、それ以前に私の思いもあります。だってユウさん、PTSDは治ったと言うけれど――あれは、そう簡単に完治するような病ではないそうじゃないですか。主治医とも相談しました。様子を見ながら薬の量を決めて、とても息の長い治療になると。やはり心因性の病ですからね……」
「で、でも――」
「これ以上、社長の悩み事を増やさないでください」
「う……」
以前、社長であり、ユウの父親でもある御堂聖に大変な心労をもたらした事を、真壁マネージャーは快く思っていないようだ。
それが元々、全て自分に責任がある事を自覚しているだけに、ユウの反論も力が入らない。
「……でも、零と会うのもダメなんて……」
「――――だから、下手にバカンス気分で浮かれて柊木・タルヴォ・零と遊んで、それでトラブルになったら大変だと申しているんです。社長も大変心配されています。あの方の親心を少しは汲んでやってください」
そこまで言われては何も言い返せない。
ユウは溜め息をついて、寝たふりをすることに決めた。
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