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レイスは元人間であるため、精霊になっても未だ人間の性質も合わせ持ち、人間だった頃の習慣を切り離すことができない。しかし一人にしておくと過去の経験から、なかなか寝付くこともできず、寝たと思っても夜中に度々目を覚ましていることが多かった。
普通の人間に比べれば耐えることは難しくないとはいえ、疲労は確実に蓄積される。そのため、毎夜、食事がわりの魔力を与えた後、気絶するように眠るレイスにつきあって、ヴァルディースも目を閉じるようになった。
今では夜中に目覚めることは多くなくなった。しかしこの草原はレイスが母を自らの手で殺した故郷だ。さすがに今回は不安定になるかと思ったものの、多少の悪戯程度では起きないところを見ると、大丈夫そうだ。
ただ、調子にのって首すじをくすぐっていたからか、それともいつにも増して冷え込んでいたからか、二人分の毛布を奪われて背を向けられた。
「おい、レイ。俺の毛布まで奪うな」
別にヴァルディースは毛布など必要ないが、寝台の上で何も纏わないのは流石にためらわれる。毛布を奪い返そうと引っ張ってみると、怒ったようによりきつくレイスに毛布を抱きしめられた。
「まったく、毛布を俺の尻尾だとでも思ってるのか?」
以前ヴァルディースはレイスの中に封じられていたことから、意識を共有している。流れ込んでくる夢の中でまで、レイスは獣姿のヴァルディースを枕に心地よく眠っていた。
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