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「ふーん。なんか訳ありだね。いう気がないならいいけど。でもあんたは何か知ってる。カズイがいなくなった理由について、確実に、ね。」
3人が、厳しい顔でサヤを見つめた。
そういうわけではない。
言いたくないわけじゃ、ないのに。
記憶の中の蟲の鳴き声やうごめき、
床を這う無数の足音、
そして何より、フードの中の金に光った目。
それらすべてがサヤの喉を塞いだ。
しかし、話すことができないのは、ただそれだけが理由であるわけではなく、小夜自身の不安もあった。
そもそもに、この三人が本当に父の味方なのかもわからない。
よくよく考えてみれば、この三人は何一つとして小夜の確信を得られるものを持っていなかった。
小夜は今更になって、三人を家に入れてしまったことを後悔し始めた。
どうしよう。何か話さなくては。そもそもなぜこの人たちはそんなことを聞きたいのだろうか。
目の前の三人の存在が、どんどんと不確かなものになっていく。
もう、自分が今何を考えているのかがわからなくなってきてしまった。
時計の針の音が、いつもの何倍も大きく聞こえる。
張り詰めた空気のまま、時計の秒針がちょうど、50回なった。
…
「ではこの娘を連れていくというのはどうだろうか。」
ふと思いついたように長い沈黙を破ったのは、私ではなく傷男の口だった。
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