第1話 ある日の夜

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「珍味屋さん、お疲れ~♪」 「おにいちゃん、お疲れ様」 「気をつけてかえりんさいよぉ~、事故をせんように」 「はい、ありがとうございます、皆さんもお気をつけて──」 「じゃ、お先に──山本さん、また電話を頂戴……」 「はっ、はい、ありがとうございます──また日程が決まればお電話をします! 店長さん! 本当にありがとうございました」 いよいよ、購買部の店長さんや、鮮魚部のお兄さん──それにパートのおばちゃん達も帰ったね。もうこうなると、この静かな山の中の街にある農協の購買部だと。本当に静まり返ってしまう……でも、まあ、夏ではないから。静まり返ってゴソゴソと──風が木や草を揺らす音を聞いても、不思議と夏のように背筋が凍りつくような事はないかな? あれって何故だろうね? 先程も少しばかり述べたけど。これが夏だと何故かしら? ちょっとした音でもビクビクとしてしまう。でも今の時期冬だと怖いと思う事が、余りないから不思議に思うよ? 皆さんもそんな事はないですか? まあ、取り敢えずは、独り言をブツブツと述べるのはそろそろ辞めて……慌てて片付けよう。外は寒くて冷たいから…… でも、まあ、あれだよ、慌てて片付けても、アパートに帰れば冷たいだろうね? だってさ、僕は、親元を離れて、一人でのアパート暮らしなのだ。特に僕自身の場合は、つい最近彼女とも別れたばかりだから。部屋に帰っても誰も僕を温めてくれないの。 でもまあ……こんな真っ暗闇の購買部の前の駐車場よりも、アパートに帰る方がいいから、慌てて片付けるよ。 ◇◇◇◇◇
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