第1話 ある日の夜

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まあ、僕は、そんな事を考えながら、また片付けを始めたよ。……今は冬の夜だから、早く片付けないと、本当に寒いから。いくら誰もいない暗い部屋だとしても、早く僕は帰宅して──お風呂に、こたつにと、入って、ゆるりとしたいのだ。 〈ガサガサ……〉 〈ガシャン! ガシャン!〉 〈ガサガサ……〉 〈ガシャン……、ガシャン……〉 ……ん? 風で草木が揺れる音だとは思うのだけど? う~ん、何だろう? 何か金属的な物を引きずる音が、混じって聞こえたような気がする? ……あれあれ? 何だろうかと? 思いながら、僕は出店の片付けをしているのだよ。 う~ん、多分気のせいかな? そう僕は、自分自身に言い聞かせて、作業を黙々とこなしていく…… だってさ、いくら冬でも、本当に怪音が聞こえてきたら、寒いのが、更に寒く感じるし、背筋もゾクゾクと凍りつきそうだよ。だから僕は、怖さを忘れる為に「いやぁ~、今日は、本当に暗くて寒いね。早く片付けようか」と、大きな声を出した──本当にわざとらしいぐらいの声を。……物の怪なら、人がここにいるから、寄り付くなと願いを込めて……その後はとにかく慌てたよ、早く片付けて帰ろう。嫌な予感もするから。 とにかく車に荷物を運んだよ。怖くて仕方がないし、嫌な予感も更にしてくるからね。
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