第1話 ある日の夜

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本当に僕は、『無心! 無心!』と、心で何度も、呟いたよ。それに『南無……』と、御経まで、心の中で唱えた! だって、僕の背に──何かを引きずる音が、更に迫って来るから……本当に、本当なんだよ。 だから僕は、その後も恐ろしさの余り、今度は。「南無……」と、声を出して唱え始めた──背に迫りくる何か? に、畏怖しているから。こ、これって、夢だよねと? と、何度も思い唱えたよ…… ◇◇◇◇◇ 〈ガサガサ……〉 〈ガシャン、ガシャン……〉 「うぅ、うううううう……」 相変わらず、何か金属を引きずるような音──僕の方へと向かって来ているから、本当に恐ろしい……だから僕、本当ならば、商品等の荷物がなければ、この場から逃げ出したいのだよ…… だってさ、いよいよ、金属を引きずる音だけが、聞こえるだけではなくて──人のうめき声まで、僕の耳に聞こえ出したんだ。
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