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『……いま、
草津に死なれたら困りますもんね? 貴方も……貴方が一番愛する柿谷霧矢も』
『……』
けれど、
渚のとどめの一言で、
否定もむなしく杏奈の瞳から涙が消えた。
★ ★
「泉石?」
自分に、
なにも告げずに外に出て行こうしていた渚を、
慌てて呼び止める。
その呼びかけに、
渚は顔だけ、
草津の方を振り返り、
ニヤニヤしながら、
彼の唇を指差す。
「俺が居たら、
彼女にキスできないだろ?」
「ななななぁ何言ってるんだよ。
お前!」
顔を真っ赤にしながら、
渚に言葉を返す・
「えっ! そんなに見せつけといて、
しないとか茉莉川さんに失礼だよ? ねぇ?」
渚は、
草津の腕の中で、
クロユリの花束を大事に抱えている杏奈に、
同意を求める。
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