略奪は、甘い蜜の誘惑

10/16
前へ
/186ページ
次へ
 けれど、 慌ててしまった為、 言葉と手の動きがかみ合っていない。 「…若草さん。 僕は、 新しい恋をしようと思うんです」 「えっ! だって……」  渚は、 続きの言葉を紡ごうとした樹里の口に、 左手をゆっくり近づけ言葉を奪う。 「僕は、 いまでも彼女が好きです。 でも、 僕は、 心の底から彼女を愛してあげる事ができなかった。 だから、 僕は、 彼女を捜すつもりはありません。 そのかわり、 もしも、 再び、 彼女と再会できたら、 見せつけてやるつもりなんです。 二人の名前が入った結婚指輪を」 「渚さん! 好きならその彼女さんを捜しに行くべきです。 彼女もきっと、 渚の事、 いまでも好きですよ。 いやぁ、 絶対、 渚さんの事、 待ってます!」 (…待ってる訳ないだろう! いまから奪うんだから) 「渚さん? あぁ! ごめんなさい。 私、 渚さんの気持ちも考えないで……」    
/186ページ

最初のコメントを投稿しよう!

135人が本棚に入れています
本棚に追加