止まった時間動き出す

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「昴。 ありがとう」  資料を引き出しにしまおうとした渚の手を上から昴が強く握る。 「渚! 僕に、 なにか隠してない?」 「…」 「やっぱり。 君って、 嘘をつく時って、 必ず、 無言になるよね? 学生時代からそこだけは、 変わらないね? で、 本当は、 この人、 何をやらかしたの?」  鳴海坂昴は、 泉石渚が、 6年間で唯一、 本当の意味で友と呼べる存在。 「……昴。 やっぱり君は、 騙せないか。  岡宮永輝は、 美緒さんの旦那なんだ」 「えっ!」  昴の瞳が、 渚の寂しそうな顔を映す。 「渚、 君は、 6年間、 恋人だった美緒さんを待ち続けていたんだろ?」 「うん。 君には、 言ってなかったけど、 3日前、 偶然、 美緒さんと再会したんだ。 そして、 その時、 はっきり言われちゃった。 私は、 もう、 岡宮永輝の妻なのって」 「……」  渚の言葉は、 とても悲しくて、 昴は、 何も返す事ができない。
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