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「泣き顔ブスでしょ」
「俺のせいで泣いてるから、超かわいい」
反則過ぎる甘い言葉に、私はもっと顔をブスにしたのだった。
三年間のすれ違いを、一瞬で彼は埋めようとしてくれた。
中学が自分だけ離れることに悩んでいたこと。
私に弱音を吐きたくても、頼られて嬉しかったこと。
意外と大雑把だったから私が一緒にクラス委員をして、助けてくれたことが嬉しかったこと。
笑顔が好きだったのに、離れる俺を見て笑ったことに傷ついていたこと。
そのあとに、言葉の意味に気づいて振り返ったら私はもういなかったこと。
そのまま同窓会でも会えないまま、美弥は俺に会いたくないのかと怖かったこと。
『染谷くんの前ではもう笑いません』
その意味が、自分のあの言葉はトラウマになっているなら、謝りたかったこと。
彼はずっとずっとべらべらと、息継ぎするのも忘れて話してくれていた。
中学の部活は楽しかったけど、サッカー選手になりたいわけじゃないなら勉強もしないといけないと、進学校を受験したこと。中学の友達に私が受験していると教えてもらっていたから再会を夢見て頑張っていたこと。
聞き終わるころには、私は染谷くんの顔を見るのが怖くなくなっていた。
「俺は、あの時から佐伯美弥のことがずっと好きだった」
夢のような甘い言葉。悪夢から目が覚めた。染谷くんに会うのが怖くて逃げた三年間だった。
「私も好きでした」
子どもだった自分たちを、許せるように。
私と染谷くんは、前を向いて歩きだした。
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