染谷くんの前では、ブスなので二度と笑いません。

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「俺の顔を見ろよ」 「ブスだから見ません」 「……ブスじゃねえよ」 「ブスって言った人が今更何を言っても、信じません」 頑なに下を向いて、カバンを握りしめていた。 すると彼は深くため息を吐いた。 「俺は、佐伯美弥さんをブスと思ったことは一度もありません。白状します」 「嘘つき。ブスって言った。うるせえって言った。覚えてるもん。昨日の晩御飯のメニューより鮮明に覚えてるもん」 「振り返ったとき、もうお前がいなくなってたから、謝るタイミングなかったし、その、悪かった」  三年越しに謝罪されたけど、全く心は癒されない。憎いわけではない。 なのに、私の心は彼の言葉を信じられなかった。  ただ三年経って大きくなった彼の足のサイズだけをずっと見ていた。 「中学が離れるのに、笑顔で話しかけてくるお前にむかついたんだよ」 「……だからうるせえって言ったの?」 「中学が離れるのに、好きだなんて言われてどうしていいのか、わかんなかった。自分の気持ちを優先した。そうしたら、一回も同総会で会わねえからさ」 彼の靴下のメーカー名を眺めながら、ただただ私はあの日の自分を思い出す。 あの日の私のことを思い出す。 「ちゃんと話がしたいって思ったのに、一度も俺の方を見ようとしないから、すげえ苦しい」
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