染谷くんの前では、ブスなので二度と笑いません。

13/15
前へ
/15ページ
次へ
自分勝手だ。お互い自分勝手に相手に思いをぶつけるだけで、理由までは伝えていないのだから。 「美弥はブスじゃねえ。ずっと傷つけたままで悪かった」 自分勝手な理想を詰め込んだ夢を見ているかと思った。近づいてくる彼の足を見ながら、頭を撫でなれて、体中がぶわっと熱くなる。 「ブスじゃねえよ。ずっと俺も伝えたかった」 頭を撫でる手が少し震えている。 「も一度、美弥と同じ教室に居たいって。同じクラスになれて、昨日、ずっと校門の前ではやくお前に会いたくて待ってたんだ」  随分都合のいい夢を見ている。だって、見上げた彼は、小学生時代の幼さは消えて、王子様みたいに素敵に笑って私を見ていたから。 「高校生になった美弥、すげえ可愛い」 「うそ」 「サラサラの髪も、あんま伸びてない身長も、真面目そうな雰囲気も、全部、可愛いままだ」 「……う、そ」 ぐしゃって頭を撫でられて、私はポロポロと泣いた。 ブスって言われた。もう傷つきたくなかった。 全力で彼から逃げようとしていた。 笑わないつもりだった。 肩にかけていたバッグが地面に落ちる。視線を下にむけようとしたら彼の両手が私の頬を包み込んだ。 「もっと俺を見て、美弥」 じわりと涙がどんどんあふれてくる。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

81人が本棚に入れています
本棚に追加