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自分勝手だ。お互い自分勝手に相手に思いをぶつけるだけで、理由までは伝えていないのだから。
「美弥はブスじゃねえ。ずっと傷つけたままで悪かった」
自分勝手な理想を詰め込んだ夢を見ているかと思った。近づいてくる彼の足を見ながら、頭を撫でなれて、体中がぶわっと熱くなる。
「ブスじゃねえよ。ずっと俺も伝えたかった」
頭を撫でる手が少し震えている。
「も一度、美弥と同じ教室に居たいって。同じクラスになれて、昨日、ずっと校門の前ではやくお前に会いたくて待ってたんだ」
随分都合のいい夢を見ている。だって、見上げた彼は、小学生時代の幼さは消えて、王子様みたいに素敵に笑って私を見ていたから。
「高校生になった美弥、すげえ可愛い」
「うそ」
「サラサラの髪も、あんま伸びてない身長も、真面目そうな雰囲気も、全部、可愛いままだ」
「……う、そ」
ぐしゃって頭を撫でられて、私はポロポロと泣いた。
ブスって言われた。もう傷つきたくなかった。
全力で彼から逃げようとしていた。
笑わないつもりだった。
肩にかけていたバッグが地面に落ちる。視線を下にむけようとしたら彼の両手が私の頬を包み込んだ。
「もっと俺を見て、美弥」
じわりと涙がどんどんあふれてくる。
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