王女アデレード

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       ☆ 「…………そう」 燭台(しょくだい)の炎が小さく揺らめく薄闇の中。僕の話を聞き終えたレオン……いや、アデレード姫は、いくらか気落ちした声音で返事をした。 「はい。今、僕が生きているこの時代は、貴女が生きていた時代から遥か未来の世界なのです。そして、今の貴女の体は……」 「えぇ。元は『レオン』と言う名の男の子の体、なのよね」 細かな(ほこり)の舞う、半壊したアジトの応接間で、アデレード姫はまだ少し信じられないような表情で自分の体を見回しつつ……それから、ペタペタと自分の顔や二の腕、胸やお尻を触って確かめてから、 「……ねぇ、リドリック。この子って、本当に男の子なのよね……?」 最終的に、少し赤い顔で自分のおへその下……スカートの奥をじっと見つめ始めた段階で、僕は少し慌て気味に口を開いた。 「はい、その通りです。……ですが、今のレオンの体は僕と同じ『ロト・アシュタロス』の末裔(まつえい)である、ジャン・ルシファーの施した魔法の影響で女体化していまして……」 説明すると同時に、僕は【錬金(アルケミア)】で姿見を錬成。アデレード姫の目の前に差し出した。 「っ……」 姿見を(のぞ)き込んだ彼女は、何度か紅の瞳を瞬かせつつ、小さく息を呑み込んだ。
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