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「……はぁ」
僕は小さくため息をつくと、身に付けている制服の上着を脱いで姫に被せた。
……本当ならば彼女には個室を用意して、シャワーや綺麗なベッドも提供したかったが……いかんせん。アジトは現在半壊している。
もっとも『錬金』を駆使すれば、すぐにでも姫の寝室くらいは準備出来るが……。
(とはいえ、お姫様はまだ覚醒して間もないし、ひとまずもう少しの間は僕の目の届くところに居て欲しいからね)
だから……。
「……はぁ」
もう一度僕は小さく息をつくと、そっと腰掛けから立ち上がった。
そして、視線の先にすやすやと眠りこけるアデレード姫の寝顔を捉えつつ、軽く腰を折った。
「おやすみなさい、アデレード様」
恭しく頭を下げながら、ほんの少しの笑みを浮かべた僕の言葉に、一瞬、彼女の頭に生えた猫又の耳がピクリと揺れた気がした。
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