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☆
「……はい。2人とも、これでもう大丈夫だよ」
柔らかい笑みと共に僕が告げると、たった今怪我の処置を終えた2人……エルちゃんとサイカくんは、少しの間戸惑いがちに自分の体を確認したり、互いに顔を見合わせたりしてから、やがて僕に向き直ってそれぞれ礼の言葉を口にする。
「あ、ありがとうございます……」
「……えっと、ありがとな」
ぺこりと頭を下げ、あるいは戸惑いがちに感謝の台詞を口にする2人に、僕はもう一度笑みを浮かべてから、ふと、肩越しに背後……霧けぶる渓谷の奥にある『エンブレム』のアジトの方へと視線を向けた。
すると、釣られるようにエルちゃんとサイカくんも僕の視線の先を目で追った。
「レオン……っ」
「アリシアちゃん……」
絞り出すような声で2人が口にしたのは、つい先刻、再び『エンブレム』に連れて行かれてしまった仲間の名前。
綺麗な長い金髪に、澄んだ青い瞳を持った彼の事を考えて、それぞれ砕けそうなほどに歯を噛み締めたり、あるいは口元に手を添えて沈痛そうな表情を浮かべる……そんな2人に、僕はそっと口を開いた。
「2人とも、僕はこれからレオンくんを取り戻しに敵のアジトに乗り込んで来るよ」
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