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「あぁ、もちろんだ!」
「お、お願いします……っ」
「……そっか」
打てば響くような2人の返事に、僕は相好を崩しつつ、ふと白衣の内ポケットから通信用の式符を取り出した。
不思議そうな顔をするエルちゃんとサイカくんを尻目に、僕は軽く咳払いをすると、手にした式符に話し掛けた。
「もしもし、シーマちゃん? 実はちょっとお願いがあるんだけどね……」
☆
『……あれ? ここは……』
ふと気が付いた時、俺は1人、暗闇の中に横たわっていた。
半ば無意識的に何度か瞬きを繰り返してから、おもむろに体を起こし、周囲をきょろきょろと見回してみる。
……しかし、目に映るのは新月の夜のような暗黒の世界。
試しに少しだけ目を細めて遠くを窺おうとしてみるが、結果は同じ。
まるで、黒い絵の具を溶かした水入れの中のような光景がどこまでも広がっているようだった。
『…………』
しばらくの間、俺は起き抜けのように回転の鈍い頭で周囲に意識を巡らせてから、やがてそっと目を閉じた。
長い睫毛に縁取られた瞳を瞑ると、今度は聴覚に神経を集中させる。
両手を頭の横に添え、じっと耳をそばだてる。
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