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それから僕は、うさぎとして運動会に参加した。
視線の先には、いつも美咲。
足を痛めていたが、障害物競走では見事な走りを見せた。
美咲の足が速いことを知っているのは、僕と伊藤明日香くらいか。
良かった。このまま美咲が生き残ればいい。
美咲さえ生き残ってくれればそれで__。
けれど、フォークダンスで危機が訪れる。
初めから、うさぎが踊ることになっていたのか、僕が輪に入らなくてはいけなくなった。
美咲と手を繋ぐ。
名前を呼びたかったが、なんとか我慢した。今ここでバレては、隠れている意味がない。美咲のところで音楽が止まらなければいいんだ。
だから僕は、男女の場所を入れ替える。
これで美咲が落ちる可能性が低くなった。
それなのに__どうやら美咲のところで音楽が止まりそうだ。
「は、離して!」
美咲が叫ぶ。
その瞬間、僕は次のペアの久米茜の手を取った。今度こそ離さない。美咲の代わりに、失格者となってもらわないといけないから。
その結果、久米が屋上から飛び降りることになっても、僕の良心は痛まなかった。
だって、僕の良心は、美咲のためだけにあるから。
僕は、美咲のためだけに存在しているから。
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