25人が本棚に入れています
本棚に追加
ユウのうしろで、ジンは可笑しそうに笑っている。素っ裸のユウとは正反対に、もう着衣が整っていた。
「おまえが無茶するからだろっ、」
ユウはぜえぜえと肩で息をしながら、振り返りざまジンを睨みつける。しかしまた嘔吐感がこみ上げて、洗面台の縁にしがみついた。
「悪かったって」
ジンは悪びれもせずそう言うと、ユウの肩にシャツをかけて、その背中をさすった。
「おまえ、いまのバイト、向いてないんじゃない、」
「あんなデカいのぶらさげてる客、そうそういねえよ」
「いや、そういう、」ジンは何か言いかけたが、途中でやめてしまった。
「なんだよ」
はっきりとしないジンに、ユウは苛立って目尻を吊り上げた。
「なんでもない」
そう言いつつ、ジンの双眸は何か意味深なものを含んでいる。ユウは彼のこういうところが、あまり好きじゃない。そもそも、最初から、ジンとはウマが合わないのだ。
ジンに背中をさすられているうちに、気分が回復してきた。
「もう大丈夫」
ユウが顔を上げると、ジンは、普段通りに笑った。
了
最初のコメントを投稿しよう!