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それは『胡蝶蘭』の客に対しても同様だ。そしてレイは、サービスの内容にほとんど制約を設けない。
「ユウ、本当に動けないなら、」
レイが言いかけたところで、ユウは即座に、「動けない」と返した。
実際、腰のあたりがずっしりと重く、少し休んでからじゃないと、立ち上がれそうにない。
「とりあえず、中、ちゃんとしておかないと、」
レイの細い手が、ユウの膝をふわりと撫ぜる。くすぐったいような感覚に、ユウは、ふっと鼻を鳴らした。
「レイ、いいよ。あとはやっておくから、」
横から口を挟んだモトイを、ユウは不満を込めて睨み上げた。
「レイさんがいい」
「ユウ……、レイも疲れてるんだから、わがままなこと言うなよ」
モトイの言っていることが、分からないわけではない。レイは『胡蝶蘭』のホストの中で、いちばん多く客をとっている。仕事が終わって戻ってきたばかりということは、つまり、そういうことだ。レイを指名する客が、総じて癖が強いことも知っている。
「レイさんがいい」
それでも、ユウは譲らない。ごろんと寝返りをうって、モトイに背を向けた。
「ユウ、」
モトイが咎めるような声を発した。そんなモトイに対して、レイが口を挟む。
「おれは大丈夫ですよ」
そして、もう一度ユウの頭を撫ぜた。
ユウは、レイのこういう甘いところも大好きだ。
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