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レイは他人の痛みには聡いのに、自分のこととなると、一転、鈍感になる。
「なにって、……?」
わざとではなく、本当に分からないというように、レイは言う。ユウはレイに気付かれないように、小さなため息をついた。
こういう時、何があったのか、ということを、レイに突き詰めてはいけない。レイが混乱してしまう。
「痛くないですか?」
質問の内容を変えると、レイはふっと微笑んだ。
「大丈夫」
レイの『大丈夫』は信用ができない。しかし、そう言われてしまうと、ユウはもう、何もしてあげられない。
ユウはレイから身を離した。レイはゆっくりと起き上がって、乱れた着衣を直している。よくよく見れば、手首にも拘束された痕が赤く残っていた。
SMプレイというものに、いっさい興味のないユウには、とうてい理解できないことだった。レイのような美しくて優しい人を、縛り上げて血が滲むまで打つなんて、いったい何が楽しいのか。
「ユウ?」
悔しさに唇を噛んだままでいると、レイが訝しげに首を傾げた。ユウはしばらくレイを見つめていたが、やがて諦めた気持ちになる。
「おさまってきたんで、シャワー浴びてきます」
はあ、と息を吐いて、ユウは立ち上がった。
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