25人が本棚に入れています
本棚に追加
身支度を整えて店を出ると、熱気を帯びた夏の風が吹き抜けた。時刻は午後六時を少し過ぎたところだ。空はまだほんのりと明るい。ビアガーデンの他、屋外の催し物が多く行われている今の時期、繁華街は人で賑わいでいる。
何となく体がすっきりしていなかった。誰か誘おうかと思いたち、ユウはスマートフォンに登録されている、連絡先を眺めた。
もともとユウは、ゲイでもバイセクシャルでもない。生粋のストレートで女の子が大好きだ。だから、仕事の外で、そういう目的で会う相手は女性ばかりだった。
特定の相手は、いる時もあるし、いない時もある。『胡蝶蘭』でアルバイトをするようになってからは、付き合っても長く続かないことが多い。だから最近は、関係性に名前を求めてくるような相手を遠ざけがちだ。
歩きながら誘う相手を探したが、体の残り火に反して、いまいち気分が乗ってこない。さっき、レイの背中を見てしまったせいかもしれなかった。
ちゃんと真っ直ぐ帰っただろうか。シャワーを浴びて事務所に戻った時には、もう居なくなってしまっていた。
最初のコメントを投稿しよう!