ユウとジンはウマが合わない

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 ユウはレイのことが好きだ。それは、レイと恋人同士になりたい、という意味の好きとはちょっと違う。セックスがしたい、というのでもない(もっとも、したくないということでもない)。  レイが安心して泣いたり、怒ったりできる場所のひとつになりたい……――それがいちばんしっくりくる。だけど、残念ながら、レイは泣きたい時も、静かに微笑してしまう人だ。だからユウは、今のところ、レイに何もしてあげられない。  こういう時、体を慰める相手じゃなくて、気持ちを慰めてくれる相手が欲しくなるんだな、とユウは思った。  とりあえず、夕飯でも食べに行こうかと踵を返したとき、スマートフォンの着信音が鳴った。 「はーい」  ユウは通話マークをタップして、のんびりと応じた。スピーカー越しに、「おう」と低い声が届く。『胡蝶蘭』で一緒に働いているジンだった。働き始めたのが同時期、さらに同い年で、時々一緒にご飯に行く程度の仲だ。もっとも、さほどウマは合わない。 『今日仕事?』 「うん、いま終わって帰るとこ」 『これからサクとR第一ビルのビアガーデンで飲むけど、お前も来る?』 「行く!」  ユウは即答して、R第一ビルのある駅前方面へ向かった。  ビアガーデン会場はビルの屋上に設営されていた。六時からオープンしていたらしく、既に人で溢れている。     
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