ユウとジンはウマが合わない

6/25
前へ
/26ページ
次へ
 部屋の中へ入ってきた相手に向かって、モトイが声をかけている。  知っている人の名前が聞こえて、ユウは首を動かそうとした。しかし、全身が鉛のようでほとんど動かなかった。 「おれは大丈夫ですけど……、ユウ?」  色気のあるハスキーボイスが傍で聞こえて、ユウは半ば手放しかけていた意識を取り戻した。  レイがベッド端にそっと腰掛ける。動けないユウのかわりに、彼はユウの顔を覗き込むように、腰を曲げた。 「レイさん、」ユウはうわ言のように彼を呼んだ。  レイは心配そうにユウの顔色を見て、そっと頭を撫ぜた。その繊細な手つきに、ユウはひどく安心する。  透明感のある白磁の肌に、色香を帯びた垂れた目尻。その左目は薄い灰色をしていて、あまり見えていないらしく、真っ直ぐに人の瞳を見る癖がある。彼には性別の垣根を取り払って、人の理性を惑わす魅力があった。  優しく頭を撫ぜてもらっているうちに、どうしようもない気持ちがこみ上げた。ユウは、両目から、ぼろぼろと涙を落とした。 「もうやだ、いたい、たすけて、」  次第に、小さな子どものようにしゃくり上げる。 「ユウ、少し我慢、」     
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加