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部屋の中へ入ってきた相手に向かって、モトイが声をかけている。
知っている人の名前が聞こえて、ユウは首を動かそうとした。しかし、全身が鉛のようでほとんど動かなかった。
「おれは大丈夫ですけど……、ユウ?」
色気のあるハスキーボイスが傍で聞こえて、ユウは半ば手放しかけていた意識を取り戻した。
レイがベッド端にそっと腰掛ける。動けないユウのかわりに、彼はユウの顔を覗き込むように、腰を曲げた。
「レイさん、」ユウはうわ言のように彼を呼んだ。
レイは心配そうにユウの顔色を見て、そっと頭を撫ぜた。その繊細な手つきに、ユウはひどく安心する。
透明感のある白磁の肌に、色香を帯びた垂れた目尻。その左目は薄い灰色をしていて、あまり見えていないらしく、真っ直ぐに人の瞳を見る癖がある。彼には性別の垣根を取り払って、人の理性を惑わす魅力があった。
優しく頭を撫ぜてもらっているうちに、どうしようもない気持ちがこみ上げた。ユウは、両目から、ぼろぼろと涙を落とした。
「もうやだ、いたい、たすけて、」
次第に、小さな子どものようにしゃくり上げる。
「ユウ、少し我慢、」
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