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ユウは泣き濡れた瞳で、上目遣いにレイを見上げた。レイの視線がユウの下肢に向く。それはまだ、少し仰いだ状態のままだが、あまり感覚がない。
「ちょっと赤くなってるけど、」
レイは小首を傾げるようにして、顔を近づけた。そして、ふーっと息を吹きかける。
「んっ、」
突然感覚が戻ってきて、ユウはたまらずに腰を揺らした。その反応を見ながら、レイは「大丈夫だね」と笑う。
「いっかい、ちゃんとイきたい、」
そのやり取りを見ていたモトイが、はぁ、と息をついた。
「ユウ、レイもいま仕事終わった後だから……、もう動けるだろ、自分で、」
「むり、うごけない」
ユウは拗ねたように言って、ぷいっとモトイから顔をそむけた。
「ユウ……」
「がんばったご褒美、」
ホスト同士が仕事の依頼以外で関係を持つことは禁止されている。そもそも、事後のケアを、ホストであるレイがフォローするのも極めて稀なことだ。『胡蝶蘭』に勤めて二年になるユウは、もちろん、そのことをちゃんと知っている。
モトイが深い嘆息を漏らした横で、レイは柔らかく笑った。
胡蝶蘭で働くようになって二年、それは、レイと出会ってからの年月と同じだ。その二年のあいだに、ユウは、いちどもレイが怒ったところを見たことがない。
レイはいつも優しくて、ぜったいに人を傷つけたり、不快にさせるような言動をしなかった。
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