ユウとジンはウマが合わない

8/25
前へ
/26ページ
次へ
 ユウは泣き濡れた瞳で、上目遣いにレイを見上げた。レイの視線がユウの下肢に向く。それはまだ、少し仰いだ状態のままだが、あまり感覚がない。 「ちょっと赤くなってるけど、」  レイは小首を傾げるようにして、顔を近づけた。そして、ふーっと息を吹きかける。 「んっ、」  突然感覚が戻ってきて、ユウはたまらずに腰を揺らした。その反応を見ながら、レイは「大丈夫だね」と笑う。 「いっかい、ちゃんとイきたい、」  そのやり取りを見ていたモトイが、はぁ、と息をついた。 「ユウ、レイもいま仕事終わった後だから……、もう動けるだろ、自分で、」 「むり、うごけない」  ユウは拗ねたように言って、ぷいっとモトイから顔をそむけた。 「ユウ……」 「がんばったご褒美、」  ホスト同士が仕事の依頼以外で関係を持つことは禁止されている。そもそも、事後のケアを、ホストであるレイがフォローするのも極めて稀なことだ。『胡蝶蘭』に勤めて二年になるユウは、もちろん、そのことをちゃんと知っている。  モトイが深い嘆息を漏らした横で、レイは柔らかく笑った。  胡蝶蘭で働くようになって二年、それは、レイと出会ってからの年月と同じだ。その二年のあいだに、ユウは、いちどもレイが怒ったところを見たことがない。  レイはいつも優しくて、ぜったいに人を傷つけたり、不快にさせるような言動をしなかった。     
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加