1話(麻由の気持ち)

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図書館の前の自転車置き場でスマホを開いた。 開いたというかスライドさせたのだが… 今はそんなこと、どうだっていい! だってスマホの画面には(‐メール新着‐Re:山口蓮です)の文字。 それは、あの思い出の彼の名前だった。 かすかに震える手で(Re:山口さん?)と打つ。 いや、 こんな、メールじゃダメだ。 聞きたい事は山ほどある。 だからこそ、もっとわかりやすく、手短に聞きたい事を伝えなくちゃいけないんだ。 「ちょっとあんた、何つっ立ってんの!?」 よく人が通る通路側で、自分の自転車に寄っかかっていた麻由を、 厚化粧の太い眉をピクピクと動かす、おばさんが怒鳴りつけた。 完全に怒ってらっしゃるっ! 「すいません」 麻由は深々と頭を下げた。 おばさんは大きな鼻の穴から鼻毛を覗かせて「フンッ」と私の頭を見下ろす。 図書館ってこんなに人に怒られる場所だったっけ? 確かに私が悪いよ。 悪いけど、もっと優しく注意してくれてもいいんじゃない? おばさんは私を怒って、すっきりしたのか軽い足取りでその場を立ち去った。 そして、ようやく麻由は真剣な表情で、 スマホに(Re:山口さん、私は未だにあなたのことが好きです)と打って送った。 雪が降ってもおかしくないくらい寒いのに、     
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