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図書館の前の自転車置き場でスマホを開いた。
開いたというかスライドさせたのだが…
今はそんなこと、どうだっていい!
だってスマホの画面には(‐メール新着‐Re:山口蓮です)の文字。
それは、あの思い出の彼の名前だった。
かすかに震える手で(Re:山口さん?)と打つ。
いや、
こんな、メールじゃダメだ。
聞きたい事は山ほどある。
だからこそ、もっとわかりやすく、手短に聞きたい事を伝えなくちゃいけないんだ。
「ちょっとあんた、何つっ立ってんの!?」
よく人が通る通路側で、自分の自転車に寄っかかっていた麻由を、
厚化粧の太い眉をピクピクと動かす、おばさんが怒鳴りつけた。
完全に怒ってらっしゃるっ!
「すいません」
麻由は深々と頭を下げた。
おばさんは大きな鼻の穴から鼻毛を覗かせて「フンッ」と私の頭を見下ろす。
図書館ってこんなに人に怒られる場所だったっけ?
確かに私が悪いよ。
悪いけど、もっと優しく注意してくれてもいいんじゃない?
おばさんは私を怒って、すっきりしたのか軽い足取りでその場を立ち去った。
そして、ようやく麻由は真剣な表情で、
スマホに(Re:山口さん、私は未だにあなたのことが好きです)と打って送った。
雪が降ってもおかしくないくらい寒いのに、
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