2話(蓮の気持ち)

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2話(蓮の気持ち)

僕の友達に、麻由の連絡先を教えてもらった。 僕にとって、麻由は気軽に話せる女友達。 なのにどういう訳か、 ヒビの入ったおさがりのガラケーには(Re:山口さん、私は未だにあなたのことが好きです)の文字。 え? 蓮の丸い目が、更にまん丸になった。 映画のポスターが張られた自室のベットで、ガラケーと数分にらめっこ。 ついにガラケーが壊れた…とは考えにくい。 この間、業者に点検してもらったばかりである。 もしかして、本当に、麻由は僕のことが好きなのかな? 蓮は少し赤みのかかった、あっちこっちに跳ねる黒髪を片手でクシャッとくずした。 高校に入ってから、今の今まで学校が違う麻由とは一切連絡をとっていない。 だからこそ、蓮はもう一度、麻由からのメールを一文字一文字しっかり見た。 (Re:山口さん、私は未だにあなたのことが好きです) ‐未だに‐ この言葉がどうも引っかかる。 何故なら彼女は「小説家になりたい」という夢をもっていたからだ。 中学校時代に、彼女の書いた小説を何度か読まさせられたことがある。 その全てが中学生とは思えない文章力だった。 そうだったから初めて告白した僕に‐未だに‐なんて言葉のミスを犯すはずがない。 告白されといてずいぶんと勝手な言い草だが、確かにそう思ったのだ。 蓮はガラケーに(Re:未だに好きってどういう意味?)と打って送った。 もしかしたら特に意味なんてないのかもしれない。 それなら後で、‐何でもない‐と取り消せばいい話だ。 もし、こじれたら、彼女との関係を全てなかったことにすればいい話だ。 女はどうして、こうも、友情を恋愛に結び付けたがるんだろう? そんなことを考えていると「れん?」とドア越しに声がした。 母さんだ。 きっとスーパーのシフトから帰ってきたのだ。 蓮はガラケーをベットにほうり投げて、ドアの隙間から顔を覗かせた。 「どうしたの?」 「どうしたのって用事でもないんだけどね、ちゃんとストーブ点けてる?  いくら冬休みとはいえ、気を抜いたら風邪ひくわよ?」 母は、後ろで束ねたストレートの髪を指先にからませた。 その姿が何とも愛らしくて、 母の口にした言葉はまったく耳に入ってこなかった。
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