16人が本棚に入れています
本棚に追加
3話(麻由の気持ち)
蓮は極度のマザコンだ。
「キコキコ」と奇妙な音をたてて走る、自転車にまたがっていた麻由は白い息を漏らした。
さっきまで、見渡す限りの道路だった道が住宅街へと変わっていく。
蓮のお母さんはシングルマザー。
だから‐そんな環境で自分を育ててくれた母親を好きだ‐とか、
そういう気持ちはわからないでもない。
でも彼のそれは親子愛とは少し違う気がしたんだ。
あ~!ムカムカする!
麻由は足に力をこめて、思い切り自転車をこいだ。
「キコキコ」と鳴る自転車の音に合わさって、かごに入ったスマホが飛び跳ねた。
やがて、
大きな家の隣にあるクリーム色の一軒家の前で自転車を止めた。
愛しの我が家である。
麻由は肩から、ずり落ちたリュックを背負い直して、
自転車のかごに入っていたスマホを取り出す。
スマホの画面には(Re:未だに好きってどういう意味?)と書かれたメールが浮かびあがっていた。
-未だに-
この言葉は彼の興味を引くために、書き足した、特に意味のない単語。
この言葉がないと、彼は私に友達以上の興味を示さないだろうと思ったのだ。
なのでわざとらしく(Re:あら、思い出せないの?)と打って送信ボタンに手を伸ばした。
最初のコメントを投稿しよう!