3話(麻由の気持ち)

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3話(麻由の気持ち)

蓮は極度のマザコンだ。 「キコキコ」と奇妙な音をたてて走る、自転車にまたがっていた麻由は白い息を漏らした。 さっきまで、見渡す限りの道路だった道が住宅街へと変わっていく。 蓮のお母さんはシングルマザー。 だから‐そんな環境で自分を育ててくれた母親を好きだ‐とか、 そういう気持ちはわからないでもない。 でも彼のそれは親子愛とは少し違う気がしたんだ。 あ~!ムカムカする! 麻由は足に力をこめて、思い切り自転車をこいだ。 「キコキコ」と鳴る自転車の音に合わさって、かごに入ったスマホが飛び跳ねた。 やがて、 大きな家の隣にあるクリーム色の一軒家の前で自転車を止めた。 愛しの我が家である。 麻由は肩から、ずり落ちたリュックを背負い直して、 自転車のかごに入っていたスマホを取り出す。 スマホの画面には(Re:未だに好きってどういう意味?)と書かれたメールが浮かびあがっていた。 -未だに- この言葉は彼の興味を引くために、書き足した、特に意味のない単語。 この言葉がないと、彼は私に友達以上の興味を示さないだろうと思ったのだ。 なのでわざとらしく(Re:あら、思い出せないの?)と打って送信ボタンに手を伸ばした。     
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