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これに返信をよこせば、少しは私に興味があるということだろう。
あっ!
そっか!
もうとっくにマザコン野郎だから、興味を示すもクソもないか。
失敬、失敬。
麻由は冷めた目でスマホの画面を見つめながら、重苦しい玄関のドアを開いた。
「ただいま」の声に返事をしてくる者は誰もいない。
午後5時過ぎの部屋は、今日も暗闇に包まれているようだった。
玄関で靴を脱ぎすて、リュックをおろし、コートをハンガーに引っ掛けた私は、
リビングと合わせて3部屋ある一階を駆け抜けて、
二階にある父と母の部屋の間の、自室に入った。
スマホを片手に照明の電気を点けると、勉強机、敷布団の入った物置、大きめの本棚が姿を現す。
いつも仕事で忙しい両親は、ほとんど家に帰ってこない。
そのため、
他人から‐かわいそう‐という謎のレッテルをはられることが多かった麻由だが、
意外とこの生活が気に入っていた。
だからこそ『恋愛小説の書き方』とカラフルな文字で描かれた本を、本棚から取り出す。
きしむ床の上であぐらをかいて、本を開いた。
(ステップ1.好きでもない男の友人を、恋愛感情的な意味で好きだと信じ込むと良い悲恋小説が書ける)
うまく出来たかな?
麻由は頬に薄気味悪い笑みを浮かべた。
好きでもない男の友人に…
蓮に…
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