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「ふぁ……」
欠伸をしながら学校へと向う。
いつもと同じ変わらない朝の風景。夏特有の大きな雲と空。
通いなれた道…俺と同じ制服を着た人間が何人も歩いている……代わり映えのない見慣れた景色…
(学校、いきたくねえなぁ……)
休みたい理由なんか『ダルイ』か『カッタルイ』しか無いけど、それでも休めるものなら休みたい……
『頑張ろう』ってのが無いのがダメだとは判ってるんだけどさ……
校舎へと向かう道。ざわめきというか喧騒……くだらない会話を聞きながら学校へと向かう… …
タッタッ……
背中から、軽やかな足音が聞こえてくる。
(朝から元気なヤツもいるもんだな)
ぼんやりとそんなことを思いつつ、ノタノタ歩いていく。
「おはようっ!」
元気な声……
追い抜きざまに、ポンと肩を叩かれる。
「へ……は?!」
俺がそんなギコチナイ声を出した時、もう彼女の背中が見えていた。
勢い良く走っていく、あの人の背中が見える。
(……おはようございます……先輩……)
小さくなっていくあの人の背中に、そう胸の中で挨拶をする。面と向ってだと絶対に言えない挨拶…
聞こえないはずの挨拶…
だけど……
あの人は、まるで俺の声が聞こえたかのようにクルっと振り返り…
「藤谷君!!今日も頑張ろうね!!」
そう大きな声で言いながら手を振った。
ドキッとしたけど……俺もつられて、少しだけ手を振った。
「は……はい……!!」
彼女は満足そうに笑い、もう一度大きく手を振って…そして、走っていった。
(………)
俺は振っていた右手を、じっと見た。
「おはようか……」
そう小さく呟いて、俺も学校へと歩いていく。
校舎の上には白い雲……
(やれやれ……なんだろうけど……)
もくもくと大きくなる雲……同じように膨らむ俺の気持ち……
「頑張る……っかな……」
どこにでもある、ほんの些細な事。
だけど……
『頑張ろう』が増えた。
見上げれば青い空に白い雲。
(やれやれだ……)
そんな気持ちもあるけれど、それ以上に俺には……
だから……
俺の足はさっきより、ずっと軽くなっていた。
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