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俺たちは幼い頃から一緒に遊んでいた近所の公園に集まった。
もう陽は落ちていて、あたりは薄暗い。
「たくさん買ってきちゃった」
大きな花火セットを広げて満面の笑みを浮かべる結依。
一本も花火に火を付けていないのになんだか既に楽しそう。
「火つけてよ~」
「いい加減ひとりで付けれるようになれよ」
「だって怖いんだもん」
花火にライターを近付けると、鮮やかな色と共に眩しい光が弾けた。
花火特有の煙の匂いに俺はようやく夏を感じた。
「わー 綺麗!」
赤や青に変化する花火を振り回す。
無邪気にはしゃぐ姿に自然と口角は上がる。
「圭ちゃん、やらないの?」
いつの間にか両手に花火を持った結依が不思議そうに振り返る。
その瞬間、胸が締め付けられるような苦しさを感じたんだ。
「どうかした?」
好きな人がこんなに近くにいる夏が、もう来ないこと。
気付かないふりをしていたんだ。
「なんでもない、やる」
_最後の夏はもう始まっている
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