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さようなら、良子 5年前から、この夏の季節にだけ、島へやって来て、一緒に死んだ老人の影と、チェスやポーカーをしたり、あの廃墟と化した洋館を満喫出来たことはこの上なく幸せだった。 そして、死に別れたはずの良子は、毎年あの洋館で私の影を待っていてくれた。 二人で最後に見た夜の海の、あの沈みきった、暗い静けさが忘れられない。 その良子も、遠くの方へと消えていった。 私もそろそろ消える頃だ。 夜空に流れ星がひとつ 遠くの方へと消えていった 解体作業の指示を出していた男が、不意に見送ってくれたが、これであの島にはもう何も残っていない。 すべては、この熱帯夜に消えてしまった。 夜空には満天の星々が、まるで夜空を覆い尽くさんばかりに煌めいていた。 誰もが、光の速さを超えて、旅に出るのだ。 もう誰とも出会うことのない旅へ。 終
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