2

3/3
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「この島に来るのも、これが最後になるのね」 不意に良子がそう言った。 「ああ」 私も良子も、その後黙りこんだまま、夜の海を見つめた。 暗く、沈んだ、穏やかな海。 何事もなかったかのような、静かな海。 「楽しかったわね」 「うん」 良子は私の手を握り、私の肩に体を預けた。 この暗く、沈んだ静かな海を見るのも、これが最後だ。 「あなたのことだけを、ずっとここで待っていたのに…」 良子の寂しげな、憂いを帯びた声が聞こえた気がしたが、それは静かな波の音に吸い込まれるように消えた。 夜が明けて、窓辺には朝日が仄かに差し込んだ。 しかし、そこにはもう、誰もいない。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!